2017 年 73 巻 4 号 p. I_277-I_282
気候変動影響による洪水氾濫形態の将来変化を明らかにすることを目的としてフィリピンのパンパンガ川流域を対象に時空間的な洪水氾濫特性を分析した.氾濫解析にはRRIモデルを適用し,降雨はMRI-AGCM3.2SのRCP8.5シナリオの結果を領域気象モデルにより5kmにダウンスケーリングし地上雨量で出現頻度をバイアス補正した.その結果,将来気候では浸水面積が約1.2倍に増大するが平均浸水時間は短くなることがわかった.これは浸水面積が増大したことで湛水が早く解消するグリッドが増え,浸水領域全体での平均浸水時間が小さくなったことも一因であるが,将来気候において降雨の時空間的な偏りが大きくなる傾向も考えられるため,浸水面積と浸水時間の両方を考慮した手法で洪水被害リスクの将来変化を評価する必要がある.