土木学会論文集B1(水工学)
Online ISSN : 2185-467X
ISSN-L : 2185-467X
水工学論文集第61巻
メコン河氾濫原の干拓が流域環境に及ぼす影響評価
平賀 優介風間 聡Chaiwat Ekkawatpanit峠 嘉哉
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2017 年 73 巻 4 号 p. I_283-I_288

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抄録
 本研究ではメコン河氾濫原において急激に進行する干拓が,周辺または下流の環境に与える影響を定量的に評価するための初期解析として,まず衛星解析により現状の干拓地を広域で特定する.更に重回帰分析により干拓地が造成され易い地域を特定する.また,現地調査により干拓が氾濫原水質に与える影響を明らかにする.MNDWI,NDVI,NDSIの各正規化指標を用いて,衛星解析による干拓地の抽出を行った.Landsat画像から目視抽出した52地点中,49地点の干拓地,95%を抽出することが出来たが,一部の干拓地では領域の10%程度しか特定出来ていなかった.これは主に目視による干拓地面積の過大評価による.更に干拓地造成の傾向を把握するため,衛星解析による干拓地抽出結果を用いて重回帰分析を行った.対象地域の各コミューン内の干拓地の有無を目的変数,プノンペン中心部からの直線距離,人口,年氾濫期間,年最大水深を説明変数とした結果,重相関係数は0.34であった.また,干拓が氾濫原の水質に与える影響について現地調査を行った.廃棄物の埋め立てが行われる氾濫原では,干拓無しの氾濫原と比較して約25倍の全リン値,下水汚水基準値の約4倍のCODを記録した.埋め立て後工場地として利用される氾濫原では他と比較して鉄の値が非常に大きく,工場地の一つではWHO水質基準値の約21倍を記録した.
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© 2017 公益社団法人 土木学会
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