2017 年 73 巻 4 号 p. I_289-I_294
近年,大河川流域で自然由来の地下水ヒ素汚染が世界的に問題となっている.これまで,地下水中ヒ素に関する研究は数多くされている一方で,地表水に関しての研究は少ない.上下水道普及率が低く,メコン河が毎年氾濫するカンボジアでは,地下水中ヒ素が地表水中に移流し拡散する可能性が推察される.そこで,本研究では地表水中ヒ素濃度推定モデルを構築した.さらに,モデルの精度検証のため数値シミュレーションによる推定濃度と雨季に実施した現地観測で得た濃度を比較をした結果,本モデルは雨季において現地観測結果とほぼ等しいオーダーを得ることを確認できた.また,2015年の数値シミュレーションの結果から,地表水中ヒ素濃度の乾季と雨季の傾向を比較した.雨季では洪水氾濫とともにヒ素が拡散し,雨季後の乾季では洪水氾濫前よりも地表水中ヒ素濃度が増加することが示唆された.