抄録
地表面に沿った風速場を推定する手法に熱画像地表面風速場推定法(Thermal Image Velocimetry, TIV)が存在する.本手法は,サーモカメラによって観測される地表面温度変動の中から乱流熱交換起因の変動を抽出し,その空間パターンの移流速度ベクトルから表面近傍風速を推定するものであり,これまでに数十メートルスケールの塵旋風や建物壁面付近の上昇流の観測及び定量的な表面風速場の測定が行われてきた.本研究では,TIVを,明治神宮を対象としたヘリコプター観測に適用し,数百メートルスケールの領域における移流の可視化及びベクトルの推定を行った.Scale Invariant Feature Transform(SIFT)による座標系統一補正と時系列及び空間フィルタリングを施すことにより,本観測に対してTIVを適用することができ,その結果地表面移流ベクトルの時系列変化や,発散流等の局所的特徴を有する風速場の測定に成功した.それらを時間及び空間平均したところ,主に北と北北西の方向から2.44ms-1のTIV速度が算出され,観測値と比較して大局的な整合性が確認された.