抄録
ダム下流河川など粗粒化した河床構造空間における土砂の移動には,巨礫・大礫で形成される粗度層内における流下方向の礫間空隙(流れが加速される空間:縦キャニオン)が重要な役割を果たす.同空間の底面せん断力を明らかにすることを目的として,粗度の流下方向間隔に注目して,風洞実験を行った.実験の結果,流下方向の粗度間隔が広いほど,底面近傍の流れが加速され対数分布に近くなり,逆に粗度間隔が狭まるにつれて,くの字形状の分布が見られ,上流の礫からの剥離渦によって縦キャニオンの加速域が狭められていることが示された.また,実測で得られたu*と計算値によるu*,ならびに掃流砂量のそれぞれからせん断力補正係数kを求めた結果,0.8から1.0の間で平均値が得られた.