抄録
数値移動床水路を用い,固定床水路上を土石流が流下し構造物に衝突する数値実験を実施した.解析結果から構造物に作用する平均衝撃力を求めたところ,上流から接近する土石流の運動量フラックスだけでなく,構造物を越流する際に変形する土砂に作用する重力も,平均衝撃力に大きく影響することを明らかにした.また,上流から接近する土石流の運動量フラックスは時間的に緩やかに変化した.一方,土石流は流下時に分級が生じ先端に大きな石が集まるため,粒子衝突による大きな局所衝撃力は,衝突の初期に発生頻度が高く,その後接近粒子の細粒化とともに急速に減少し,平均衝撃力とは異なる時間変化を示すことを確認した.さらに,土石流流下時の大きな粒子の浮き上がりは,水面勾配が下流に向かって緩やかになる場で活発に生じることを明らかにした.