2018 年 74 巻 4 号 p. I_1183-I_1188
本研究では,平成29年九州北部豪雨により生じたため池の決壊状況と要因を明らかにするとともに,ため池決壊の有無による下流域の洪水氾濫に及ぼす影響を把握するために,現地調査,大型ため池模型の越水実験,洪水氾濫シミュレーションを実施した.その結果,山の神ため池は,越流を主要因とした決壊が発生し,越流時間は40-50分程度,越流水深は50cmであった.高さ1mの大型ため池模型を用いた越水実験により,ため池の決壊過程としては,下流水路からの溢水や堤体の越水による下流水路周囲や裏のり面全体が侵食され,下流水路・洪水吐が順々に流失し,決壊に至ったものと推察された.氾濫シミュレーションから,山の神ため池の決壊から下流域の集落に洪水が到達する時間はわずか10分と短時間であったことが示された.