抄録
現在の荒川において潜在的な破堤氾濫リスクがどこに存在するかを探ること,江戸時代の旧堤防(特に控堤)が現代においても有している減災機能を明らかにすることを目的とし研究を行なった.昭和22年型(1/200)波形を用いて,氾濫原に存在する控堤を含む洪水・氾濫流解析モデルを作成し,控堤の有無による氾濫状況の相違を評価した.荒川本川からの氾濫箇所は吉見町付近の狭窄部上流,支川では和田吉野川上流,市野川の狭窄部上流など,堤防の高さや河川線形は異なる現代においても明治43年洪水と類似した箇所に氾濫リスクが存在することが明らかになった.埼玉県管理区間の和田吉野川や市野川の氾濫をそれぞれ相上堤が7.8時間,長楽堤が2.5時間ほど貯留し下流域への氾濫を遅らせていた,横手堤も相上堤から溢れた水を1.8時間ほど滞留させる効果を保有していた.