抄録
北上山地水系において,冬季の平水時における河川への溶存鉄流出に対する土地被覆の影響を評価し,溶存鉄負荷量に対する土地被覆の原単位を推定した.植生および,農地や都市等の人間活動の影響を評価するために,上流域の33地点および中・下流域の30地点で河川水を採取し,溶存鉄を含む水質と土地被覆の関係を解析した.溶存鉄濃度は,溶存有機物濃度,紫外部吸光度(A254),水田および都市部の土地被覆割合との間に有意な正の相関を示した.溶存鉄負荷量(g/day)を目的変数,集水域の各土地被覆面積を説明変数とした重回帰分析によって,原単位(g/km2/day)を推定した結果,広葉樹林1.57,水田139,都市部439であった.以上から,河川経由での溶存鉄供給には有機物が影響し,集水域における人間活動の負荷が大きいことが示された.