抄録
東日本大震災前後の水質汚濁負荷発生量の変化を明らかにするため,宮城県および福島県中通り・浜通り地方を対象として2010年度と2012年度のCOD,TN,TP発生負荷量を発生源別に集計した.両年度の結果を比較したところ,最も顕著な変化は下水処理場の被災による宮城県の生活系の発生負荷量に見られ,宮城県全域の下水処理場からのCOD,TN,TP発生負荷量がそれぞれ2.63,1.24,1.93倍に増加していることが分かった.対象領域全体の発生負荷量についてもそれが主要因となって増加していることが確認されたが,その増加率は1~11%程度に留まった.流出先の沿岸域全体から見れば,震災から1~2年後における集水域の発生負荷量は震災前とそれほど大差ないことが示唆された.