抄録
札幌望月寒川流域では厳冬期に突然気温が上がり,同時に降雨が重なることで洪水や冠水が発生する事例が見られた.厳冬期の水害の検討はこれまでほとんど見られないが,このような降雨と融雪が重なるような現象の規模や頻度,要因を調査することが災害対策の面から必要とされる.
本論文では長期的な水循環を検討した既往モデルを時間単位の計算に拡張利用し,積雪期の降雨に伴って生じた望月寒川流域の水災害事例の再現を試みた.その結果,前日からの融雪と降雨の重なりによる流出量の増加が見られた.また,降雨と融雪が重なって起こるこれらの現象の規模が降雨量と融雪流出量の総和になるものとみなし,推定規模や再現期間を示した.