2018 年 74 巻 5 号 p. I_1201-I_1206
大気海面間での運動量交換の指標となる運動量交換係数(抵抗係数)は風速と共に単調増加するとして扱われてきた.しかし,暴風下では海面から発生する砕波飛沫(以下,飛沫)により乱流が抑制され,従来の風速の対数則分布とは異なることが示唆された.さらに,観測研究から風速33m/s程度で運動量交換係数はピークを有するという結果を得た.暴風状態は飛沫が存在するのみではなく,海面波の状況も様々である.Liu et al.(2012)は飛沫と波齢の影響を加味した運動量交換係数を提案した.本研究では,同運動量交換係数を用いて,数値気象モデルで有用なバルク輸送式を基に熱交換係数を導出した.同式より潜熱・顕熱交換のピーク値は波齢が0.4,風速25∼33m/sに存在することを示し,飛沫と波齢の影響を加味した大気海面間熱交換を議論可能にした.