2018 年 74 巻 5 号 p. I_1489-I_1494
本研究では,洪水氾濫流が都市ガス供給システムに及ぼす影響に着目し,市街地の地上に存在する供給施設,機器に着目した被害推定を行った.2000年9月東海豪雨で破堤氾濫が生じた新川周辺の沖積低地に形成された市街地を対象に,実績推定とそれ以上の外力規模を含む3ケースの洪水氾濫を想定し,iRIC Nays2D Floodを用いて街区構造や建物分布を考慮した平面2次元氾濫流解析を実施した.
市街地に供給する都市ガスを整圧する「地区ガバナ」と住居に備えられた遮断装置付き「マイコンメーター」の浸水状況を考慮して都市ガス供給システムへの影響を試算したところ,外力規模の大きなケースでは広域にわたる深刻な供給停止が発生し得る可能性が示された.ただし,洪水氾濫流が地区ガバナを格納する建屋に損傷を及ぼす影響については認められなかったことから,低平な市街地における洪水氾濫流では,構造物を損壊させるほどの流体力が生じる可能性は低いことが示唆された.