2018 年 74 巻 5 号 p. I_247-I_252
Xバンドマルチパラメータレーダから雨滴粒径分布(DSD)と降雨量を精度よく推定するために,山口他が提案した方法(山口法)を元に,より高度化したアルゴリズムを開発した.山口法では,レーダ反射因子(Zh)と伝搬位相差変化率(KDP)からDSDパラメータを推定するが,降雨減衰が強い場合にZhが過小評価される.本研究では,KDPと反射因子差(ZDP)からDSDパラメータを推定するアルゴリズムを導入した.擬似観測実験の結果,強い降雨減衰下では,新手法の方がDSDパラメータや降雨量を山口法よりも精度よく推定した.これは,ZDPと比べてZhが強い降雨減衰の影響を大きく受けることによる.Xバンドマルチパラメータレーダと雨滴粒径分布計の観測データに適用した検証でも,より高精度での推定が確認された.