2018 年 74 巻 5 号 p. I_391-I_396
二瀬ダムの下流域で実施している土砂還元に対する,付着藻類の応答性を過去14年間の調査データに基づき分析を行った.経年変化については,全ての観測地点で付着藻類の細胞密度が徐々に高まり,2013年以降は10,000 cell/mm2を超えるようになった.この細胞密度の増加は,珪藻綱の寄与が最も大きいものの,部分的に,藍藻綱や黄金色藻綱が主体の群集構造を確認した.また,河床材料粒径との関係は,河床細粒化に伴って,藻類の細胞密度が増加するとともに,撹乱抵抗性を有する生物種が出現するようになった.しかしながら,撹乱強度の増大に起因した,珪藻綱から藍藻綱や黄金色藻綱が主体の群集構造への遷移は認められず,出水時の土砂動態を含む,付着藻類の継続的なモニタリングの必要性が示唆された.