2018 年 74 巻 5 号 p. I_469-I_474
硝酸態窒素に着目し,多摩川における環境流量放流による水質改善効果を調べた.計算は河川の物質量と生物量の相互作用を考慮した統合解析モデルを用いた.季節による違いをみるため2017年5月,8月,11月,2018年2月を対象に検討した.計算の結果,下水処理場からの放流を踏まえた縦断方向の物質濃度が概ね再現できているとともに,気温と流量により影響を受けている季節の差も反映できていた.環境流量を0.7m3/sと1.5m3/sの2パターンで放流した結果,1.5m3/s放流した場合にNO3濃度の低減効果が大きかったが,NO3の取り込み濃度減少に寄与する付着藻類量について流量による差異は見られなかった.また下水処理場の放流点を変えた場合,上流よりも下流に放流した方がNO3濃度の低下に繋がることが分かった.