2018 年 74 巻 5 号 p. I_463-I_468
近年,河川に生息する生物の種多様性や生物量の減少要因として,河川水温の変化の可能性が指摘されている.したがって,流域における水温変動特性を明らかにする必要があるが,広域における河川水温の連続的なモニタリングはほとんどおこなわれていない.そこで本研究では,中国地方の3つの一級水系を対象に下流域から支流を含む源流域までの広域において水温モニタリングを実施し,流域の水温変動特性を明らかにすることを試みた.その結果,河川水温は地下水や湧水,ダムの影響を強く受けること,源流域の水温は標高が高いほど低く,農耕地のように開放的な地点では短期変動が大きく,樹林による被覆率の高い地点では短期変動が小さいことが明らかとなった.さらに,水温の連続データを用いてヒゲナガカワトビケラの羽化時期を予測した結果,対象の3水系においては,水温の違いによって羽化パターンが異なることが予測された.