2018 年 74 巻 5 号 p. I_91-I_96
気候変動を考慮した洪水氾濫シミュレーションと人口減少を反映した複数の資産分布変化シナリオを組み合わせることによって洪水被害の将来変化を推定した.気候変動と人口減少が及ぼす影響を比較するとその傾向は流域によって異なり,流域特性に応じた治水が必要であることが示唆された.また降水量の時間的・空間的分布も洪水被害に大きな影響を及ぼすことが示され,日合計降水量のみを基準として治水を行うことの危険性が明らかになった.資産分布変化シナリオ間で比較すると,中心市街地への資産集中が洪水リスクを増加させる可能性や,対象とする洪水の規模によって治水効率が異なる可能性があることが示され,都市計画において治水を考慮する必要性が示唆された.