2019 年 75 巻 2 号 p. I_1471-I_1476
平成30年7月西日本豪雨では,岡山県倉敷市真備町で氾濫開始後短時間のうちに広範囲が浸水し,甚大な被害が生じた.気候変動による豪雨災害の激甚化が懸念される中,浸水状況を迅速に把握することが求められる.これには合成開口レーダー(SAR)搭載の地球観測衛星を活用した対応が期待されており,発災直後の緊急観測の実施や被災前ベースマップの整備も進んでいる.本研究では,洪水時のSAR衛星データの緊急観測に対応して,比較する被災前データとして同季節のSAR衛星データを選択し,浸水域の自動抽出と簡易な浸水深評価を短時間のうちに行うプロセスを検討した.推定した浸水域は航空機や地上からの観測により推定された浸水域とほぼ一致するものであり,浸水深は痕跡高と比較すると過少評価される箇所も多いが,非常に簡便に把握が可能であった.