2019 年 75 巻 2 号 p. I_61-I_66
本研究では,阿蘇北部に位置する白川水系黒川流域を対象に気候変動に伴う氾濫被害の増大に適応するための土地利用のあり方に関する知見を得るため,1902年から2003年までの土地利用の変遷や家屋の変化を地形分類別に整理し,2012年九州北部豪雨とその1.4倍の超過洪水を対象に浸水家屋数や浸水深を評価した.その結果,特に低地の谷底平野や低位段丘面における家屋数の増加によって浸水家屋数は増加したこと,超過洪水が発生した場合,谷底平野と低位段丘面では2012年九州北部豪雨ではみられなかった浸水深3.0mを越える被害が生じることが予測された.また,これらの浸水被害は,谷底平野では河川から概ね約600m以上離れた場所,自然堤防では比高が概ね1.8m以上の場所でそれぞれ低減,回避できると推定された.