2019 年 75 巻 2 号 p. I_67-I_72
流域内の人口や資産の分布及びそのバランスは,流域管理において極めて重要な事項である.特に,流域治水の考え方に基づき流域内の洪水リスクを削減するためには,上下流バランスを考慮した河川改修,土地利用管理を行う必要がある.本研究は,日本109水系における将来の洪水暴露人口とその流域内上下流バランスの変化を推計した.その結果,109水系内には現在2千7百万人が洪水リスクに曝されており,109水系内の総人口に対する割合は2050年までほとんど変わらないことが分かった.また流域の人口バランスによる分類を行い,大都市圏周辺の流域は下流に多くの洪水曝露人口を持ち,上下流バランスの変化は比較的小さいこと,上流域に曝露人口を持つ流域では,その地域での人口変動が上下流バランスに敏感に影響することなどが明らかになった.