2020 年 76 巻 1 号 p. 98-106
農作物のブランド化や6次産業化による付加価値の高い加工品の生産等,農業を基盤とした新たな社会経済システムの構築が進められている中,水害による農作物への直接被害及びその波及被害の発生は社会経済の持続的な発展と安定を脅かすものであり,こうした農業被害を適切に治水事業評価に反映することが重要である.本研究では,ブランド化された農作物評価額の設定方法ならびに6次産業に対する経済波及被害の定量的な算定方法を立案することで,昨今の農業事情を考慮した今後の治水事業の経済評価手法を提案した.この手法をモデル河川へ適用して試算した結果,総被害額は約1.2倍となり,治水事業の経済的妥当性の評価結果に無視できない影響を及ぼしうることが示唆された.