2020 年 76 巻 2 号 p. I_115-I_120
世界人口は2100年までに概ね増加の傾向にあると推測されている.しかし,耕作地面積には制限があるため,持続可能な農業生産への対応が必要とされている.本研究では,持続可能な農業生産を脅かす原因の一つとなる灌漑耕作による塩類集積に着目した.文献調査による塩類集積が発生するメカニズムに基づき,土壌タイプ,乾燥,地下水位,地下水の状態,灌漑方式の5つの因子を定めることで,灌漑農地における塩類集積の潜在的リスク評価を全球規模で行った.結果として,灌漑農地の8割が何かしらの潜在的リスクを抱えており,2割以上が塩類集積に対して高いリスクを持っていることが明らかとなった.さらに,天水農地に対しても6.5割の地域が塩類集積の潜在的リスクを持っていることが分かった。