2020 年 76 巻 2 号 p. I_1339-I_1344
小水力発電による減水区間の環境影響を補償するために,集水域の植生を管理し湿地を再生した場合の流況変化を評価した.岡山県北東部に位置する落合川は,源流域に劣化進行中の湿地を持つ黒岩高原があり,その下流の急峻な流程で小水力発電事業が計画されている.湿地劣化の原因の1つは,集水域の樹林化により蒸発散量が増え湿地の地下水位が低下したことにある.そこで,集水域の蒸発散・遮断蒸発を考慮したタンクモデルを構築し,歴史的な植生変化が発電事業に寄与する発電ポテンシャルに与える影響を評価した.その結果,検討した2017年,1976年,1948年の植生分布様式の中で1948年の植生分布に管理した場合の発電ポテンシャルが最も高まるとともに流域の自然再生にも寄与することが分かった.本研究の成果は,国定公園内の水力開発のモデル事業として適用できる可能性がある.