2020 年 76 巻 2 号 p. I_307-I_312
本研究では,塩水阻止型地下ダムの健全性評価に資する塩水分布計測の活用方法について検討した.地下ダム止水壁の透水係数分布を均質に形成したケースを健全状態として,止水壁の下部,中央部にそれぞれ高い透水係数を配置することにより遮水機能の弱部を想定した二次元塩水浸入実験と数値解析を実施した.その結果,弱部の有無や位置,貯留水位に依存した残留塩水塊の分布形状になる点,貯留水が越流状態にある場合,止水壁内に存在する弱部の位置に応じて,止水壁の下流側に淡水が流入する度合いに変化が生じる点を明らかにした.これらの知見は,地下ダムの水質管理にて塩水濃度を計測する止水壁上流側に加えて,下流側の塩水濃度計測により,止水壁の健全性評価に応用できると考えられる.