2020 年 76 巻 2 号 p. I_505-I_510
現在,河川氾濫のおそれがある場合には,広範囲に同時に避難勧告が発令されている.しかし米国では,避難に必要な時間が十分確保できない場合には,避難指示を出さないという判断が行われている事例がある.本研究では筑後川中流域を対象に,浸水シミュレーションやリードタイムの分析を行い,避難場所へ「逃げるリスク」と自宅での垂直避難にとどめる「逃げないリスク」を比較考慮することで,一様な避難勧告ではない「垂直避難を促す勧告」をすることの妥当性を検討した.結果として,各エリアごとに「逃げるリスク」と「逃げないリスク」は大きく異なり,十分な避難時間を確保できない場合には,エリアによっては避難せずに家にとどまった方が安全であるなど,エリアごとに適切な避難行動を選択する必要があることがわかった.