2020 年 76 巻 2 号 p. I_571-I_576
河川水が堤防を越水する前に堤内地で湛水している場合,湛水プールが越流水の勢いを減衰させ堤防侵食が抑制される,ウォータークッションの効果があることが知られている.2019年の台風19号においても,堤防越水前に堤内地に氾濫水が侵入し,湛水状態になっていた被災箇所が報告されている.本研究では,堤内地側の湛水条件が,河川堤防の越流侵食プロセスに与える影響を定量的に評価することを目的とし,越流侵食実験,解析モデルによる実験の再現・検証,台風19号で被災した都幾川上流部の土質・水理条件を用いた現地適用計算を行った.これらの結果から,湛水により堤防裏法尻が保護され,湛水深が大きいほど法面下部の洗堀が抑制されることが明らかになった.