2020 年 76 巻 2 号 p. I_649-I_654
2019年10月に発生した台風19号により,日本各地で堤防の決壊や河川の氾濫,内水氾濫によって多くの被害が発生した.地球規模での気候変動により気象の極端化が進む今,同程度の規模の台風や,現在整備されているインフラで対応しきれないような局地的集中豪雨は増加の一途を辿っている.これは大都市においても例外ではなく,ひとたび未曾有の雨が降れば,河川洪水や内水氾濫被害に見舞われる.本研究では,精緻な浸水予測手法であるS-uiPSを用いて,多摩川下流域における浸水事例の再現計算を行った.その際の入力降雨には,2019年台風19号のXRAIN実降雨データを用いている.この再現計算により,対象エリア内の降雨量が小さかったとしても,上流で高強度の降雨があり,河川の水位が上昇していれば,対象エリアにおいて顕著な浸水が生じる場合があることを明らかにした.