2020 年 76 巻 2 号 p. I_679-I_684
建物が連続して立地するエリアを含む流域に対して高速かつ高精度に浸水シミュレーションを行うために通常用いられる氾濫解析手法を大きく変えない形での精度向上が必要である.本研究では,解析メッシュにおける空隙率の異方性について着目し,平面水路を用いた氾濫水理模型実験ならびに解析メッシュの異方性を持つ空隙率を考慮したモデルを構築した.その結果,異方性モデルを用いた氾濫解析が異方性配置により流下方向,横断方向へ強調される流れを高い精度で再現可能であることを確認した.また,抗力係数の感度分析結果より,流速の低減効果を抗力係数に反映させることで,ある程度解析精度が向上することを確認できたが,空隙率の異方向成分を考慮することの方が感度が大きい結果となった.したがって,本研究で開発した異方性モデルに適切な異方性空隙率を与えることで,計算精度の向上が期待できる.