2020 年 76 巻 2 号 p. I_673-I_678
内外水氾濫時の浸水予測精度の向上を目的として,建物内部への浸水を考慮した解析モデルの開発を試みた.建物内部への浸水を考慮した氾濫実験を行い,建物境界での流量計算にトリチェリの定理を適用した数値モデルによって,実験での氾濫状況を精度良く再現できることを確認した.さらにその数値モデルを実スケールのモデル市街地に適用して,国土交通省の洪水浸水想定区域図作成マニュアルによる手法と比較したところ,浸水予測結果に差が生じることがわかった.したがって,建物内部への浸水は浸水予測結果に無視できないほどの影響を及ぼすこと,建物境界での流量予測にはトリチェリの定理が適用できることがわかったが,建物境界が解析格子境界に一致しない場合の取り扱い手法,ならびにトリチェリの定理に用いる浸水口面積と浸水口高さの設定方法等について今後検討を加える必要がある.