2020 年 76 巻 2 号 p. I_73-I_78
本研究は,低平地河川に潜在する大規模な洪水リスクと治水施設群の効果の推定を目的とする.研究対象とした千歳川は石狩川の支川で,低平地を流れる河川であるため,本川からのバックウォーターの影響をうける地形的に脆弱な地域である.本研究では千歳川流域の洪水氾濫リスクの推定を行うため,d4PDFのダウンスケーリングデータから得られた大量アンサンブル降雨情報で気候の不確実性を考慮した.この際,d4PDFの現在気候予測データ3,000ケースの中に過去に観測された洪水と類似の事例が存在することを確認した.また,過去の洪水実績を超過すると予測されるケースを千歳川,石狩川双方の流出パターンから見出した.結果として,現在の千歳川に潜在する過去の実績以上の洪水氾濫被害の可能性を,大量アンサンブル降雨情報を用いて示すとともに,それに対する治水施設群の効果を推定した.