2020 年 76 巻 2 号 p. I_817-I_822
深層強化学習を用いてダム下流河川の危険度を考慮して洪水調節を行うAIモデルを構築した.具体的には,まずダム放流量から下流河川の流量変化量を推定する回帰式を作成した.強化学習では,モデルの行動に伴う環境の変化に報酬を与えることで,高い報酬を獲得できる行動をモデルが学習する.本研究で構築したAIモデルでは,既往研究の学習設定に,回帰式から算定した下流河川の推定流量が流下能力を超過した場合に減点するという報酬設定を追加した.これにより,ダム地点の洪水調節とダム下流河川の危険度を低減する放流操作の獲得を狙った.構築したAIでは,下流河川の危険度が未考慮であるAIと比較して,多くの洪水事例でピーク流量の低減がみられた.また,現行の操作規則・細則に基づくシミュレーションとの比較も行い,モデルの妥当性を確認した.