2020 年 76 巻 2 号 p. I_85-I_90
河川への自然排水の有無に着目した2つの浸水シナリオ(自然排水シナリオ,排水不良シナリオ)を設定し,極値降雨データに基づいた日本全域の内水氾濫による被害額と曝露人口を推定した.現在気候において自然排水シナリオでは,期待被害額は6180億円/年,期待曝露人口は5万2695人/年と推定された.一方,排水不良シナリオでは,期待被害額は9兆4224億円/年,期待曝露人口は87万388人/年と推定された.さらに,排水不良シナリオを用いて,近未来気候(2031年~2050年)の被害額と曝露人口を推定した.その結果,現在気候から近未来気候にかけて,被害額は約2倍,人口変化を考慮した曝露人口は約1.6倍に増加した.被害額の増加率は日本海側で高い傾向にあった.また,北陸地方および東京都と埼玉県では,曝露人口の増加率の高いことが示された.