2020 年 76 巻 2 号 p. I_883-I_888
長野市の穂保地区では,千曲川の堤防決壊による洪水氾濫に伴い大量の土砂が堆積し,農作物や農地に被害が出たほか,土砂の撤去などの復旧の妨げになるなどの被害をもたらした.堆積した土砂について現地調査を行ったところ,粒径がかなり細かい土砂が決壊地点付近で20cm以上堆積している様子が見られた.つぎに,支川流域からの流出流量を考慮して千曲川の洪水流を再現し,それを境界条件に用いて掃流砂と浮遊砂を考慮した非構造格子による数値解析モデルで氾濫流と土砂堆積の再現計算を行った.解析の結果,最大流動深や土砂堆積の全体的な傾向は再現できたものの,各地点の土砂堆積厚の再現精度にはさらに改良が必要であることがわかった.さらに,複数の堤防決壊箇所を想定して土砂堆積厚の最大値を重ね合わせることによって,洪水氾濫による土砂堆積想定区域図の作成を試みた.