2021 年 77 巻 1 号 p. 158-166
令和2年7月初旬に九州に停滞する梅雨前線に向かって,大量の水蒸気を含んだ暖かい空気がいわゆる「大気の川」を通ってインド洋や東シナ海から流れ込んだ.そのため,スケールの大きな線状降水帯が九州の一級河川の球磨川や筑後川の流域全体を覆う形で発生して大量の降雨をもたらし,甚大な洪水災害を引き起こした.従来の線状降水帯の範囲は比較的狭く,短時間で集中的に豪雨を降らせていたが,地球温暖化による線状降水帯の大型化ならびに台風の強大化・低速化により,地形や位置的特性から九州の河川における大規模氾濫リスクが高まっている.また,今次水害で大規模な浸水被害が発生した球磨川流域の治水対策として,主要支川の清流川辺川の環境保全と球磨川流域の防災の両立を可能とする『Hybrid型の大型流水型ダム』を新たに提案した.