2021 年 77 巻 1 号 p. 185-190
本稿は「令和2年7月九州豪雨災害調査(代表:熊本大学・大本教授)」の一環として球磨川本川上流氾濫原の遊水機能の変化を検討した結果を述べている.まず地図情報データ解析から左岸段丘面および氾濫低地の地形の特徴を明らかにし,続いて一連の航空写真により1960年代以降の流域状況の変化を把握した.上記の結果に基づき本川上流左岸の地形モデルを作成し,氾濫数値シミュレーションにより遊水機能の変化を概算するとともに,霞堤等による遊水機能の回復可能性を検討した.その結果,令和2年7月豪雨の規模の出水に対して従来の氾濫原は800m3/s程度のピーク流量低減効果を有しいていた可能性があったと考えられた.また霞堤等により過去の状態に近い遊水機能の回復が可能であると考えられた.