2021 年 77 巻 2 号 p. I_1231-I_1236
近年多発している洪水氾濫により,我が国では逃げ遅れによる人的被害が増大しており,流域内多地点における水位・流量を即時的かつ高精度に予測するモデルが必要不可欠である.本研究では,山口県の佐波川を対象に,3時間先の水位・流量予測を流域内多地点で高精度に予測することを目的とし,深層学習の中でも時系列の処理能力が高いLSTMを用いてモデルを構築した.解析結果から,水位予測は流域内多地点における3時間先の水位を高精度に予測可能であることが示された.一方,値の変動範囲が大きい流量予測には入出力層に用いる流量値を常用対数変換する前処理を採用した.その結果,常用対数変換しない場合に比べてピーク流量の誤差率および生起の遅れ時間は大幅に軽減され,流域内多地点における3時間先の流量を十分に予測可能であることが示された.