2021 年 77 巻 2 号 p. I_1249-I_1254
2019年台風19号により関東地方を中心として大雨による被害が発生したが,直撃を免れた近畿・中部地方に対しても台風19号の最悪進路と温暖化の影響を考慮に入れて可能最大降水量を評価する必要がある.本研究では,高解像度台風モデルにより台風19号に対する擬似温暖化進路アンサンブル実験を行い,台風19号が近畿・中部地方に最悪進路で上陸した場合の可能最大降水量とその将来変化を評価した.将来気候下(RCP8.5の2080~2099年)の可能最大降水量の将来変化は,紀伊半島では+200mm,木曽三川の上流域では+50~150mmとなった.温暖化による可能最大降水量の将来変化は,最悪進路から東西におよそ±0.5°の進路のずれがもたらす降水量差に匹敵することが明らかとなった.