2021 年 77 巻 2 号 p. I_1255-I_1260
バックビルディング型の線状対流系である2012年亀岡豪雨と2014年広島豪雨に対して,全球平均気温約4℃上昇のRCP8.5,及び2℃未満に抑えるRCP2.6シナリオに基づき擬似温暖化実験を行った.その結果,温暖化シナリオが高位になるにつれて線状対流系が強化された亀岡豪雨とは対照的に,広島豪雨では徐々に線状対流系が発生しなくなった.その要因として,広島豪雨実験では水蒸気流れの上流に存在した弱雨域が温暖化効果によって先に強化され,対流有効位置エネルギー(CAPE)やバルクリチャードソン数(BRN)で表される,線状対流系が発生するための環境場を崩していたことを示した.熱力学及び力学的な要素が上手くバランスした時に発生するバックビルディング型線状対流系という現象に擬似温暖化実験を適用する際は,周囲の擾乱が与える影響も十分考慮する必要がある.