2021 年 77 巻 2 号 p. I_1483-I_1488
水害経験が住民の避難行動に関する意思決定に与える影響を分析するため,コンピュータ上で模擬された水害経験から強化学習により避難判断基準を獲得していく様子をシミュレートするエージェントモデルを作成した.複数の確率規模の洪水に対し,作成されたエージェントモデルは,近傍の河川水位を避難スイッチとして参照しつつ様々なタイミングで避難を開始し,その適切さに従った報酬を受け取ることを繰り返す.その過程で報酬を最大化するような避難開始タイミング(河川水位の基準値)を学習する.報酬の与え方と洪水規模を複数設定して実験を行った結果,自宅が浸水するケースについて浸水に合わずに避難所に到達できた場合にのみ報酬を与える学習方法が,最も確実な避難基準を獲得できる可能性が高いことが分かった.