2021 年 77 巻 2 号 p. I_163-I_168
本研究は,情報理論の導入により,気候システムが有する年最大降雨量の自由度をエントロピーとして定量化するとともに,これを基軸とした,確率雨量の将来変化予測手法を提案するものである.これにより,力学的予測により得られる将来の年最大雨量の時系列の情報を逐次的に同化させ,任意の時点における確率雨量の予測値が算定可能となる.具体的には,観測情報から年最大降雨量のエントロピーの増大過程を算定し,このエントロピーの増大過程が保存されるベイズ予測分布を構成することで,確率雨量の将来変化の推定手法を構築した.当該手法により得られる逐次的な確率雨量の時系列は,段階的な洪水対策の整備を検討する場合,現実の時間軸を踏まえた事業オプションを検討する際の有益な指標となると考える.