2021 年 77 巻 2 号 p. I_169-I_174
気候変動を踏まえた治水計画のあり方を検討するために大規模アンサンブル気候予測データを活用する際の課題について,庄内川と狩野川における事例を基に分析を行った.全球平均気温2度および4度上昇時の計画降雨継続時間における年最大降水量の将来変化倍率を5kmの空間解像度の気候予測データから推計したところ,4度上昇時の結果は国土交通省により示された将来変化倍率とおおむね整合していた.一方で,庄内川においては2度上昇時の結果が国土交通省により示された将来変化倍率よりも大きく,4度上昇時よりも2度上昇時の方が降水量が大きくなることが示された.アンサンブル数の多い20kmの空間解像度の気候予測データによる検証により,アンサンブル実験数の大小がこのような降水量変化倍率の特徴に影響を及ぼすことを明らかにし,アンサンブル数の少ない5kmデータを用いる課題を確認した.