2021 年 77 巻 2 号 p. I_439-I_444
田んぼダム実施水田では畦畔高が整備水準並みに確保され,孔からの流出量が抑制されていない限り,よほど大規模な降雨でなければ溢水しないよう設計されている.しかし,流域スケールでの数値シミュレーションの結果,溢水する水田が多く発生した.これには隣接地からの雨水の流入や排水路の水位上昇に伴う水田への逆流など,いくつかの外部要因が関わるが,流域内の多数の水田それぞれで要因を特定するのは困難であった.そこで,本研究では流出成分可視化モデルを援用し,隣接地からの流入と排水路からの逆流を可視化する新たな解析手法を開発することで,溢水水田の発生要因を特定した.また,水田の溢水発生を抑える対応策として,畦畔高の嵩上げが有効であることを示した.