2021 年 77 巻 2 号 p. I_553-I_558
本研究では,島根県の高津川の下流域を対象として,環境DNAの由来とされる魚類の糞と粘液(環境DNA含有物質)の流水環境下における動態を複数の流量条件でシミュレーションすることで,河川における環境DNA含有物質の流下距離と,環境DNA含有物質濃度と上流側の生物量との関係を,複数の流量条件で検討した.その結果,環境DNA含有物質の流下距離の限界は,渇水流量時では800m,豊水流量時では1900mであり,流量によって大きく変化した.河川における環境DNA含有物質濃度が魚類の生物量を把握するのに適している距離は,対象種の流程分布や流量によって異なり,アユでは200~700m,カワムツとオイカワでは50~950mであった.また,流量が少ない場合ほど,生物量の詳細な縦断分布を予測できる可能性が示唆された.