2021 年 77 巻 2 号 p. I_547-I_552
本研究では,環境DNA定量メタバーコーディングを用いて2020年9月の江の川土師ダム下流区間の16の支流における魚類の環境DNA濃度を算出し,支流間の魚類群集構造の違い,および魚類と環境要因との関係を解析した.その結果,用水路型の支流と自然河川型の支流との間に有意な魚類構成の違いがみられた.自然河川型の支流は用水路型の支流に比べ,魚種数が有意に高く,生息場に沈水植物を必要とする魚種や砂礫を好む魚種の環境DNA濃度が高い傾向が明らかとなった.さらに,複数の魚類の環境DNA濃度と河川流量との間に正の相関がみられた.これらの結果から,環境DNA定量メタバーコーティングにより同一日かつ多点観測で定量的に魚類群集を評価することができ,支流の護岸化や河川流量の減少などにより特定の魚類の支流の利用が減少し,魚類の多様性や群集構造が顕著に変化する可能性が明らかとなった.