2021 年 77 巻 2 号 p. I_85-I_90
昨今数値予報の事前放流への利用が全国のダムで活発化している中,現在の気象庁降雨予測が,全国の多目的ダムでの事前放流判断に対し,どの程度の精度になっているかを評価した.全国のダムでの解析には,地質に基づき総合化されたタンクモデルを用いて流入量を計算し,また各ダム本則操作や諸量も個々に調査し取り入れた.その上で,直近の災害を対象として,各予測時点に見積もられる,事前放流で確保すべき容量や所要時間の精度を評価した.その結果,確保すべき容量の空振りや予測更新毎の振れ幅等,不確実性は確認されたものの,対象ダムが持つ洪水調節容量や下流の流下能力の元では,利水容量の回復が困難になる事例は少なく,事前放流が必要なダムに対しては,異常洪水時防災操作の規模軽減に有効な情報となっていたことが確認された.