2022 年 78 巻 2 号 p. I_109-I_114
本研究では,記録的な豪雨をもたらした2021年8月の停滞前線による大雨の事例に対し,将来の水蒸気差分を2つの異なる手法で取り扱う疑似温暖化実験を行い,水蒸気の取扱いが雨量の将来変化に与える影響を調査した.1つ目の手法は,現在と将来で相対湿度を固定し気温上昇分のみで水蒸気量の変化を加味する手法であり,もう1つは比湿の将来変化を反映し相対湿度を修正する手法とした.現状再現計算と比べると,いずれの疑似温暖化実験においても積算降水量が小さくなり,とりわけ相対湿度を修正したケースで顕著な傾向が見られた.要因として降水が起こる前に大気が安定化したことが確認されており,疑似温暖化実験における水蒸気変化の取扱いが雨量の将来変化に与える影響が大きいことが確認された.