2022 年 78 巻 2 号 p. I_325-I_330
地上近傍の平均風速の鉛直分布は対数則に従うとされているが,非定常に変化する平均風の挙動により対数則から外れる時間があることが指摘されている.また,その成立高度に関する定量的評価の知見が少なく,時空間変動についても不明な点が多い.そこで,茨城県つくば市と東京都目黒区でドップラーライダーを用いた平均風速の鉛直分布観測を行った.対数則が成立するとされる慣性底層は一般的に高度約100mまで発達すると言われているのに対し,高度200m以上で観測される5~6時間周期の風速変動に応じて,対数則に従う速度分布が高度500m以上まで達することが分かった.また,接地境界層内のスウィープ現象が上空の風に対応して時間変動しており,接地境界層内外の低周波変動がもたらす運動量交換を促進している可能性が示唆された.