2022 年 78 巻 2 号 p. I_361-I_366
近年,線状対流系豪雨による被害が頻発しているものの,その勃発メカニズムは明らかにされておらず,発生予測は未だ困難を極めている.特に,必然的要因と偶然的要因を区別して議論されることはほとんどなかった.そこで本研究ではそれぞれの要因を区別し,勃発メカニズムを解明することを目的として,乱れを陽に計算し,偶然性が存在する中で必然性・偶然性の評価ができるLES(Large-Eddy-Simulation)を用いて数値実験を行った.その結果,淡路島の地形による山岳波が六甲山南部に低温位の領域を形成することで別の暖かい空気塊の上昇に寄与していることを示した.また,温位の初期値にランダムノイズを与えたアンサンブル実験を行うことで,偶然的要因による発生への影響が存在することが示唆された.