2022 年 78 巻 2 号 p. I_445-I_450
利根川と荒川,球磨川と緑川および荒川と庄内川の3種類の2水系群を対象に,d4PDFを用いて推定される年最大洪水ピーク流量データに2変量極値理論を適用して各気候での計画規模の再現期間を超える洪水(超過洪水)の同時生起頻度の将来変化を分析した.4度上昇実験で超過洪水が同時生起する再現期間は利根川と荒川で800年,球磨川と緑川で473年となった.また,個々の河川での計画規模洪水の発生頻度は過去実験よりも増加するが,超過洪水の同時生起確率は過去実験と変わらず,個々の水系の河川整備によって集積リスクも低減することがわかった.荒川と庄内川で超過洪水が同時生起する再現期間は標本推定値が4,000年となったが,モデルによる推定は不安定となった.より頑健な推定にはアンサンブルの増強や気象学的検討が重要である.